自動車の収益性を推進する、インテルの包括的アプローチ

Illustration of an electric vehicles internal system includes components like the central compute, dGPU, PMIC, battery, BMS, DC/DC converter, EV power inverter, and Ethernet switch, connected with labeled pathways on a dark blue background.

Whole-Vehicle Approach to Boost Automotive Profits

Jack Weast

Jack Weast

Intel Fellow, vice president and general manager of Intel Automotive

インテルが進めるシステムベースのアプローチにより自動車メーカーのコスト削減とエネルギー効率化を促し、多くの人々が待ち望む次世代の体験を提供

自動車業界では今、人工知能(AI)はもちろん、ビジネスモデルやサプライチェーン、エキサイティングな新しい車内体験に至るまで、ほぼすべての側面において大きな変革が進んでいます。しかし自動車メーカーにとっては残念なことに、こうした変化には多くの場合コスト増が避けられず、特にAI内蔵の高性能システム・オン・チップ(SoC)のコストや電気自動車(EV)のますます大型化するバッテリーを考えると、そのコストはかつてないほど高額なものになっています。

コスト削減は自動車業界にとって常に必須の課題です。しかし、テクノロジーの進歩が続く中で、利益を上げつつ、消費者が望む次世代の体験を提供しながらこの課題に対処するには、どのようにすればよいのでしょうか?

その答えは、システムベースのアプローチを採用することにあります。

包括的な戦略の採用

コスト面での数限りない課題は、ソケットを1つずつ見ていては解決できません。その代わりに、インテルは包括的なシステムレベルの戦略を提案します。

単に個々のコンポーネントの改良を重ねていくだけではなく(これはインテルが常に行っていることですが)、点と点を結びつけ、システム全体の収益へとつなげなければなりません。インテルが重視しているのは、ソフトウェア定義型インキャビンコンピュート、インテリジェントな電力管理、データセンター形態のワークロード管理という、3つの主要要素の統合です。これらの進歩を組み合わせることで、車両の部品ごとにコストを最適化するよりも、全体としてより大きな効果が得られます。

このインテルのアプローチでは車両システムを「全体」として捉えるため、ソフトウェア定義型中央演算処理システムとソフトウェア定義型ゾーン演算処理サブシステムの間でワークロードをシームレスに移動できるようにすることで、最大限の柔軟性や最適なコストとパフォーマンス、そして優れたエネルギー効率が確保されます。

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サイロ化の解消

現在の車両アーキテクチャーはサイロ化されており、決して効率的とは言えません。例えば、大半のEVにおいては、走行していない状態であっても、外部カメラを監視してセキュリティー脅威を検出したり、近づいてくるドライバーを認識する機能が備わっています。この機能は通常、車両インキャビン演算処理サブシステムが担当し、多くの電力を消費するため、車両が動いていない間も不必要に電力を消費します。

このワークロードはソフトウェア定義型中央演算処理システムに常駐する必要はありません。インテルのソフトウェア定義型のゾーン・コントローラーを使用してカメラのストリームを処理すれば、データセンターのアプリケーション・オーケストレーションの概念を取り入れ、ワークロードを低電力デバイス(この場合はゾーン・コントローラー)に移行し、必要な場合にのみ中央演算処理システムを起動させることができます。これにより、電力消費の節約と効率化が可能になり、ワークロードがソフトウェア定義型のゾーン・コントローラーに動的に集約されるため、車両に搭載する電子制御ユニット(ECU)の総数削減につながります。

さらに、制御システムにインテリジェントな電力ポリシーを適用することで、車両全体の電力消費量を削減できます。例えば、車両の充電中にADAS ECUをオフにしたり、環境条件に応じて電力使用量を調整すれば、電力を大幅に節約することが可能です。冬にはエアコンのECUをオフにして、真夏にはシートヒーターのワイパーECUをオフにします。

いずれも簡単な例に過ぎませんが、システムレベルの視点によって、車両アーキテクチャーにどれほど大きな影響があるかが分かります。

このコンセプトを車両全体に適用し、すべてのECUを中央集約型の電力管理コントローラーから制御すれば、省エネの可能性は無限大です。内燃機関(ICE)の車でもEVでも、あらゆる車両で効率向上が可能になります。

このような戦略は新しいものではなく、これまでもPC業界の変革を推進し、PCプラットフォーム上の電力を消費するすべてのデバイスを検出して確定的に制御するAdvanced Configuration and Power Interface(ACPI)仕様のような標準規格を通じて、バッテリー持続時間の延長といった進化を主導してきました。バッテリーが1時間も持たなかった初期のノートブックPCから、1日中持続する現在の長時間駆動可能なバッテリーへと、PC業界が変革を遂げた主な要因はここにあります。この考え方はすでに自動車業界にも伝わり、新たに自動車技術者協会(SAE)車両プラットフォーム電力管理規格(J3311)が策定されました。これは、PC業界で実証済みのコンセプトを車両に適用することを目的としています。

データセンターに根ざした統合型アーキテクチャーの原理

ソフトウェア定義型の設計を適切に行うことは、アーキテクチャー的な考え方であり、つまりコンピュート、メモリー、I/Oはプールされた共有リソースとして、干渉されることなく目の前にあるどのワークロードに対しても動的に割り当てられるという原理です。このようなアプローチを取ることで、車両の電気/電子(E/E)アーキテクチャーを見る視点が、アプリケーションとシリコンを1対1で割り当てる固定機能のソケットから、複数ソケットにまたがるリソースプールへと変わり、消費者が求める体験を提供できる、新しいシステムレベルのアプローチが可能になります。

要するに、これはデータセンターであり、電話やタブレットのアプローチです。そしてこのアプローチをこれまで数多く成功させてきた実績のあるインテルは、自動車業界のこの重要な転換期を支える最適な企業と言えます。

回り始めた変革のホイール

ソフトウェア定義型に移行し、サステナブルかつスケーラブルな車両を目指す道は平坦ではありません。しかし、自動車メーカーが車両アーキテクチャーをソケット1つずつ進化させようとすれば、なおさら困難になることでしょう。

包括的なシステムレベルの視点をとることで、適切なシリコンと機能が連動するように設計され、収益性への新しい道が開かれるはずです。インテルはこのアプローチをリードしていく独自の立場にあります。

インテルフェロー、インテル コーポレーション副社長 兼 オートモーティブ事業本部長、ジャック・ウィースト(Jack Weast)